テイラー展開
この夏の数学IIIからの宿題の一つに、英語で書かれたテイラー展開のテキスト(10ページほど)を学習するものがありました。数学を英語で勉強するのは初めてで、内容も大学レベルのものでかなり苦戦しましたが、結果的に言うととても面白い課題でした。なのでちょっと雑記します。ちなみに、英語での説明は辛いので全て日本語です。あしからず(?)
使用したテキストは↓のp475〜p484と練習問題
Calculus With Analytic Geometry
- 作者: John B. Fraleigh
- 出版社/メーカー: Addison-Wesley
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この「テイラー展開」とは何かというと、要するに「関数の近似」です。もう少し正確に言うと、ある関数f(x)を近似する関数Tn(x)を導き出すことです。近似したい関数f(x)を用意した上で、近似する中心aと、近似の精度を左右するnの値を決めれば、あとはf(x)の導関数から簡単に近似式を作ることが出来ます。
テイラー展開は次の式に基づいて行います:
(ただし、0!=1として計算します)
は、「近似している」という意味です。
右辺側に、aとnを代入してシグマを展開してやれば、あとはf(x)の導関数を使ってテイラー展開ができます。f(x)を微分さえできれば、どんなに得体の知れない関数でも近似が可能です。また、nの数が大きいほど近似の精度は高くなり、n=∞のときはもとの関数と一致します。ただし、その分計算がややこしくなるので、簡単な近似でよければn=1で済ませてしまいます。
やり方だけではつまらないので、自分の演習をかねて、一つの具体例を。(教科書のコピペじゃないよ)
まず、について、x=0周辺での近似値を知りたいとします(sin2°とか) x=0周辺での近似ということで、a=0になります。後のことを考えて、n=3と設定します。
先ほどの式に代入してシグマを展開すると、次のようになります。
これにsinを知りたい場所xを代入すれば、その近似値が出ます。(ただし、xは0の近傍でなくてはならない)
では、sin2°の近似値をこの近似式を用いて求めてみましょう。sin2°=sin(π/90)なので、xにπ/90を代入すると、
という値が得られます。
これに対して、関数電卓による正確な値は0.034899496・・・です。比較してみると、近似値の誤差は0.0000009、誤差率0.000257%でした。ほとんど誤差が見られず、かなり正確な値が得られたことになります。
続いて、sin10°の近似値を求めてみると、
これに対して、正確な値が0.17364817・・・です。誤差は0.0000164となり、誤差率は0.00944%に増加しています。誤差率は36倍になってますが、実用上の精度では全く問題ないでしょう。
最後に、sin90°の近似式を求めてみましょう。
ご存知の通り正確な値はジャスト1ですので、誤差は0.0749902になり、誤差率は7.5%に膨れ上がっています。このことから、中心点であるx=0から離れるにしたがって近似の精度が落ちてくることが分かります。ちなみに、これ以上先の値を求めようとすると急激に誤差が大きくなり、まったく使い物にならなくなります。
その理由はこちら画像を見ていただければ分かります。今回の近似式は緑線のグラフに相当します。この近似式だと、最初のうちは上の例で示されたように、ほぼ正確な近似をしてくれるものの、Π/2より先では急激に誤差が拡大してしまっています。他のグラフはnの値を大きくしたときに得られる近似のグラフで、より正確な近似を行っています。
このように、テイラー展開は非常に実用的な数学であり、原理に直接訴えかけるタイプのものとは別の驚きを与えてくれます。他の例としては、同じf(x)=sinxでも、a=Π/6とすることで、sin31°やsin35°などの近似値が求められます。つまり、自分の脳みそと8桁電卓だけで三角表が作れるわけです!(やる気になれるかどうかは別として・・・) ほかにも、対数関数やeの値など、ありとあらゆる値や関数を近似できます。素晴らしい数学の技術だと思います。
もっと詳しいことは以下のサイトを参照っ!
Wikipedia - テイラー展開
Wikipedia - Taylor series