マンデルブロ集合−規則性の証明

本日、一年間にわたって謎だった命題を証明することに成功した。

一年前に偶然発見したマンデルブロ集合の規則性に関して、以下のことはPC上の計算で実験的に分かっていた:

  • 次数は通常「2次」であるが、「a次」として一般化すると、a-1個のコブが出現する。
  • 初期値は通常「0」であるが、「複素数z0」として一般化すると、コブの角度に合わせてz0を設定することで、その方向のコブだけが残り、明らかな対称性が見られる。

文章では意味不明だと思うので、図を使って説明しよう。(マンデルブロ集合の定義は、2006/06/08の記事で言及している。)


1つ目は2007-05-21の記事でも若干紹介している。次の図は、漸化式の次数をa=5にした場合のマンデルブロ集合である。

見ての通り、4個の「コブ」が並んでいるのが見て取れると思う。同様に、a=11なら円周上に10個のコブが並ぶ。このことから、「次数aに関して、a-1個のコブが出現する」ということを推論した。


2つ目は、以下の図を見てもらえれば直感的に理解していただけると思う。次数は先ほどと同じa=5だが、初期値を図の中に表示されているように、「コブ」の方向に角度を合わせて設定している。(色が上の図と違うが、あくまで便宜上のものなので気にする必要はない)

この図を見てもらえれば、規則性と対称性は明らかだ。したがって、「コブの角度に合わせてz0を設定することで、その方向のコブだけが残り、明らかな対称性が見られる」という推論を立てるに至った。


これらの推論は、実験結果を見ればほぼ間違いない事実ではあったが、数学は定義から出発して証明を完成させなければ、それが100%正しいとはいえない。したがって、あくまで推論の域を出なかった。

どちらの証明も、これまでは皆目手のつけようがなかったが、今日突然大きな進展を見せた。ダメもとで試してみた証明方法がとてもうまく運び、試行錯誤はありつつも、結局一時間ほどで両方の証明が一気に完成してしまった。

余りにもあっけなかったし、後から自分の証明を読み返してみても、「なぁんだ、そんなことか」とつぶやいてしまうほど、その規則性の理由は単純なものだった。

実際に使った計算技術も、オイラーの公式と高校で習った指数法則ぐらいだった。


しかし、なぜ一年もかかってしまったのか。

もちろん、その最大の理由が自分のバカさ加減にあることは疑いようがないw もう少し詳しく弁解するなら、先入観を取り払い、思い切った数式変形と論理展開をトライできるだけの発想が出るまでにこれだけの時間がかかってしまったということに尽きるだろう。

難しい専門的な数学を勉強しなければ歯が立たない、という先入観があったが、実際には高校数学で十分に解けた。ついに解けたという達成感はもちろん大きいが、解けてしまったこと自体の驚きのほうがはるかに大きい、というのが正直な感想だ。


だが、大きな謎は未だに残っている。

というのは、今回証明できたのはあくまでも「対称性の理由」であって、「そういう形になる理由」という根本的な問いに答えるものではないからだ。

今回は手に負えないと思っていたものが思いがけなく解けたが、次はどうなのだろうか。しかし、試みることなくして成功はない。初期値による規則性の実験はほぼ済んでいるので、このトピックについては、できる限り理論立てを試していく方向性で取り組んでみたいと思う。


さらには吸引点や特異点に関する問題など、興味をひきつけるトピックは無数にある。数学の一分野たるフラクタルの中のマンデルブロ集合、というたったひとつだけのテーマの中にである!! これらはまだまだ実験の余地があるので、プログラムの改良と合わせて、実験事実と推論を積み重ねていきたい。


この数日間で予想外の大きな前進をすることができた。しかし、謎がひとつ解ければ、新しい十個の謎が目の前に現れる。謎はどこまで行っても尽きないのだ。


最後に、証明を書いたノートを載せる。人の証明を解読することほど難しいことはないので、この証明も例に漏れず相当解読困難だと思われるが、一種の「証拠写真」ということでご了解いただきたいw 口頭で話すことができれば説明もしやすいが、文章では限界があるので証明に関する具体的な説明は割愛させていただきたい。

なお、集合や一次変換の表記に関していくつか不適切な部分があるが、あくまで表記上の問題であり、証明の内容・プロセス自体はこれで正しいはずである。