資本論 第1篇「商品と貨幣」

当然ながら、高校生ごときが一度読んだだけで完璧かつ正確に理解できるような易しい代物ではないので、誤解や間違いがある場合も多いと思います。ご了承ください。それと、いつものですます調だと、資本論本文の文体と一致せず、どうも締りがないので、ここだけは、だである調で書いてみることにします。>

資本主義的清算追う式の支配的である社会の富は、「巨大なる商品集積」として現われ、個々の商品はこの富の成素形態として現れる。(岩波文庫版 第1分冊 p67)

という一文で資本論は始まる。

したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。(同)

マルクスが序盤で強調する点は、主に以下の二点である:

  • 商品には、使用価値価値(使用価値とは別物としての、価値の大いさ)がある
  • 商品の価値は、労働の化身である

第1章の商品の分析では、原始的な等価形態から始まり、全ての商品の価値がある代表的な一商品によって表現される一般的価値形態へと到達する。その上で、その一般的価値形態の進化した形態として、貨幣が全ての商品の価値を表現するようになるプロセスへと移行する。貨幣形態である。(ここまでの部分が最も難しい)

貨幣形態で登場するのは、金である。ただし、仮に信用貨幣となって金の実体から離れるとしても、貨幣の機能を損なうことはない。

なお、この第1篇第1章の時点で、商品と労働の関係も述べられており、共産主義の主要な要素である「生産手段の社会化」なども示唆されている。

次に、商品と貨幣との関係へと、話は進む。

ここで強調されていることは以下のような点である:

  • 商品流通において、貨幣は流通手段となる
  • 商品と貨幣との交換においては・・・
    • 商品は、自分自身の一般的価値態容と交換される(=商品の価値が貨幣に変わる)(売り)
    • 貨幣は、商品の持つ特別な使用価値と交換される(=商品を使うために貨幣を払う)(買い)
    • すなわち、流通過程では商品の交換価値のみが評価され、終着点に達して初めて商品の使用価値が全うされる
  • 貨幣の流通では・・・
    • 貨幣は商品と対になって初めて機能するものであり、商品価格の総和=貨幣量という関係が成り立つ
    • ただし、貨幣の流通速度を考慮すると、貨幣量=流通絶対量×流通速度という(イメージに近い)関係が成り立つ
    • つまり、流通速度が速くなれば、貨幣の絶対量は少なくてもよいことになる
    • (マルクスいわく、商品の価格が一国に存在する金の量によって決まるというのは全く逆であり、ばかげた話である。商品の価格総和に対して貨幣側の動きが対応するのが道理である)

第1篇の終盤に差し掛かると、マルクスは商品交換によって生じる貨幣退蔵を指摘する。

言葉こそ難しそうに聞こえるが、貨幣退蔵とは、生産した商品を売却することによって貨幣を手元に引き寄せ、自分の消費を少なくすることによって貯金を作るというごく当たり前な行為である。一言でまとめれば、富の蓄積である。

その上で、支払手段としての貨幣を考慮する。実際の取引では、交換価値の発生と支払いのタイムラグが生じてくることは明らかである。したがって、支払準備金としての貨幣退蔵(貯金)も進み、実際に流通する貨幣全てが商品交換に回ることにはならず、貨幣量>消費価格の総和という関係に落ち着くことになる。

以上が第1篇の重要な部分を大雑把にピックアップしたものである。必ずしも正確とは限らないことは、重ねて申し上げておきたい。

最後に、貨幣と商品の価値形態に関してマルクスが述べている一説を引用して、この記事を終わる。

このマルクスの言葉は、本来的な価値を持つべき商品がないがしろにされ、貨幣のみが重要視される矛盾と危険性を指摘している。不景気時に余った商品が無価値として無残にも廃棄され、一方で、空虚の存在に過ぎない貨幣を皆が追い求める経済の姿は、資本論から150年経った現在でも、その程度や現われ方にこそ差はあれ、解決されていない。

支払手段としての貨幣の機能は、媒介なき矛盾を含んでいる。現実の支払いを行うかぎり、貨幣は流通手段として、すなわち、ただ物質代謝の消滅する、そして媒介的な形態として現われるのではなく、社会的労働の個性的な化身として、交換価値の独立の存在、すなわち、絶対的な商品として現われるのである。この矛盾は、貨幣恐慌という生産及び商業恐慌のある局面で頂点に達する。
<中略>
(恐慌においては、)商品の使用価値は、無価値となり、その価値は、それ自身の価値形態の前に消失する。ほんのいま先までブルジョアは、好景気に酔いしれて得々として、貨幣などは空虚な幻想だと称えていた。商品こそ貨幣だ。ところが貨幣こそ商品となった! いまや全世界市場にそう響きわたる。鹿が新鮮な水辺をしたい鳴くように、世界市場の心は、唯一の富である貨幣をもとめ叫ぶ。恐慌においては、商品とその価値態容である貨幣との間の対立が、絶対的矛盾にまで高められる。
岩波文庫版 第1分冊 p240)