『国家の品格』

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

これまた話題書。テスト前期間よりも前に読了していたものの、レビューは見合わせていました。一応書いてみたんですが、うまくまとまらないです。
いきなりですが、この本がピタリと指摘してくれたポイントは、「正しい論理展開を行えたとしても、論理の出発点が間違っていては意味がない」ということです。この「出発点が間違っている」という言い方が厳しすぎるとれば、「前提が違うと、正しい論理展開を同様に行ったとしても、結論が変わってくる」と言い換えられるでしょうか。

つまりは、この道筋です:

前提 ⇒ 論理展開 ⇒ 結論

数学に当てはめて言えば、計算を間違えてしまうのは論理展開部分の間違いですし、「三角形の内角の和は150度」と勘違いして図形の計算をしてしまうのは前提部分の間違いです。

ただ、実際には、数学では前提部分は公理系という「普遍の前提」が用意されています。数学で異なった結論が出ずに最後まで整然とまとまってくるのは、この普遍性が根本から支えているためなのです。(この普遍性こそが数学の最大の魅力ともいえますね)

しかし、社会ではそうはいきません。なぜなら、人それぞれ異なった価値観があり、社会に「普遍の前提」というものが存在しないからです。そこから生じる前提の差が、最終的な結論の違いとなって現れるのです。

論理展開の間違いを指摘するのは簡単です。一種の計算ミスのようなものですからね。

しかし、前提の間違いを指摘するのは大変なことです。それを「それは違う」と言うことは、相手の価値観に直接触れることであり、この時点で議論から外れて言い争いになることもしばしばです。そもそも、前提が正しいかどうかはあくまで相対的なものに過ぎず、誰もにとって正しい「絶対的な前提」というものはないのが、一番厄介なことです。

そこで藤原氏が強調するのが、品格のある前提です。古くからの日本に伝わる文化こそが、日本人の心を豊かにし、豊かな社会を作るための土台(前提)を作り出すのです。

詳しい内容を書き始めると長いだけなので、ここでストップです。とにかく素晴らしい本です。読んでみてください。