南アルプス南部縦走 9/2・3日目(高山裏〜悪沢岳〜荒川小屋)

高山裏避難小屋4:40⇒小広場(大斜面入口)5:35/5:45⇒荒川中岳避難小屋8:15/8:25⇒悪沢岳9:15/10:05⇒荒川中岳避難小屋11:00/14:50⇒荒川小屋16:00  晴れ のち ガス のち 晴れ

3時起床。朝食はミソラーメン。

テント撤収時に雨が降るのは一日の始まりとしては最悪なパターンなのだが、今朝は幸いにも樹間から星空が望めるいい天気だった。

暗闇の中ヘッドライトの明かりを頼りにパッキングとテント撤収を済ませ、4時40分に歩き出す。例の学生団体は15分ほど先行して出発して行った。これまで4時起床・6時出発を基本にしてきたので、暗いうちに早立ちして歩き出すのは初めての経験だ。鬱蒼とした森の中にトラバース気味の登山道がついている。

1時間も歩かないうちにヘッドライト無しでも歩けるようになり、すっかり明るくなった頃に大斜面の入り口にやってきた。



先行していく学生団体の方々。荷物がでかい!

ここから標高差600mを一気に登る。森林限界までが意外と長く、木の枝がしばしばザックなどに引っかかるw



森林限界を越えると、まさに大斜面。

最初のうちは晴れていたのだが、稜線には徐々に薄いガスがかかるようになってきた。そして、いざ稜線に出ると南側から猛烈な風と霧雨が吹き上がってきていた。稜線に出てから中岳避難小屋までがまだ少しあるのだが、大斜面入り口からは撮影で立ち止まる以外は休憩と言える休憩をしていなかったため、相当へばっていた。霧雨の中をよたよたと歩きながら、15分ほどで中岳避難小屋に到着した。

この小屋に荷物をデポさせてもらい、サブザックで悪沢岳の往復に出発する。今日のガスはかなり薄い種類のもののようなので、しばらく待てば展望が開けるかもしれない。出発する頃には霧雨もあがって晴れ間も見られるようになってきた。

サブザックの中身は水と行動食とカメラだけ。全荷物だと23kg前後になるので足の置き方に気をつけないと膝を痛めたりすっころんだりするのだが、軽いとそのような心配も少ない。軽快!



一度鞍部までしっかり下った後、悪沢岳山頂まで200m強の登りとなる。途中、例の学生団体とすれ違い「晴れ間が出たとき、富士山と雲海がすごかったですよ!」と聞いた。よし、こうなったら晴れ間が出るまで1時間は待ってやるw



南ア南部の最高峰に到着。しかしガスであるw そして持ってきた行動食をちびちび食べながら晴れ間を待つ。



そして、ついに出た。遠方には富士山。たしかにすごい雲海だ。


晴れ間は一瞬で、すぐにガスが稜線を覆ってしまった。赤石岳方面の眺めを見られなかったのは残念だったが、ひとまず富士山と雲海が見られたことに満足し、小屋に戻ることにした。



南アの石は赤いものが多く見受けられる。これが赤石岳の名の由来らしい。

で、小屋に戻った後は小屋前で荷物の整理をしながら小屋番の方と話をしていたのだが、とても気さくな方で、ずいぶん話が盛り上がってしまったw

(最初は山や天気に関する普通の世間話だったのだが、大学名と専攻を聞かれて「電子工学と光工学です」と答えたところ、「俺ね、昔は量子光学やってたんだ」と言われ、量子光学、相対性理論電磁気学宇宙論、事象の地平面、空間の曲率テンソルファインマン物理学などのトピックで次々と話をしてくださり、その合間に山の話や面白いお客さんの話が混じるという、強烈なトークが始まったのであった。なんでも、小屋番をやってると暇を持て余すからと、物理学の本を複数持ち込んで勉強しているらしい。たまにお客さんにこういう話をするらしいのだが、「小屋番とこんな話ができるとは思わなかった!」というのがもっぱらの評判らしい。これぞスーパー小屋番w)



そして、話しているうちに悪沢岳のガスも晴れて素晴らしい景色が広がり、降りるに降りれない状況になってしまった。荒川小屋までは1時間の行程なので、お茶までご馳走になってついつい長話をしてしまった。

小屋番の方も「今日は天気安定してるから16時までに着けばいいさ」と言っていたのだが、そろそろ15時も近くなってきたので、荒川小屋に向かって降りることにした。本当はここに泊まって楽しい話をもっとしたかったのだが、あいにく学生の懐は小屋泊まりができるほど暖かくはないw ということで、「今日は荒川でテント泊しますけど、いつかまたお金を貯めて小屋でお世話になります!w」とご挨拶をして失礼させていただいた。結局4時間も小屋前にいてしまったことにw 本当に楽しい時間をありがとうございました。



中岳付近の稜線から定例連絡のEメールを送り、荒川小屋方面に下り始める。荒川小屋までは500mほどの下りとなる。膝に不安を抱えていた割には、大きな問題はなくスイスイ下ることができる。出発待ちの2週間以上のブランクのおかげだろうが、ちょっと皮肉w

そしていよいよ、先ほどまで頑固にガスをまとったままだった赤石岳もついに姿を現し始め、そのスケールに圧倒される。山体そのものの大きさ、重量感のある岩の色、山頂直下までを覆う緑、これぞ南ア、巨大で重厚な山容が素晴らしい。


この写真を見れば分かるとおり、南ア南部の縦走ではアップダウンもまた非常にダイナミックなものとなるw 具体的には、今日は600登って500下っているし、明日の赤石岳越えは600登って600下り、あさっての聖岳越えは600登って800下り、3日後の上河内岳と横窪沢までの下山に至っては600登って1200下ることになる。しかもこの数字は宿泊地〜最高点〜宿泊地だけのものであって、途中の細かいアップダウンは含まないものである。

下山時に1000m超の下りが登場するのはどこでも同じだが、600m以上のアップダウンが毎日続くというのは、北アの縦走ではまずあり得ないことである。去年の常念岳越えもなかなかのものだったが、それでもたかだか400登って400下るだけのことに過ぎない。一日かけてじっくりとひとつの山を越える。これこそが南ア南部の魅力だ。
途中沢をひとつだけ渡り、わずかに森林限界を下回ると荒川小屋に到着する。(遠くから見ると、鞍部付近だけが樹林帯になっており、そこに荒川小屋が建っていることがわかる。防風と水の確保のための最良解だ) テントサイトは樹林帯の中に点在しており、今日は3張り。他の2張とは小尾根を挟んで反対側に張ったため、今日も実質的に自分だけの静かにスペースを確保できた。視界も割と開けている場所だ。

ここのテント場はトイレも比較的近いので日本酒を買って夕食後に一杯いただくことにした。



とりあえず先に夕食を食べる。今夜はボロネーゼパスタ・ポタージュスープ・パン2個。ボロネーゼのソースはレトルトのものだったので、とてもおいしくいただけた。



デザートにキウィを食べる。山行日数的にはもう少し後がいいのだが、常温保存なので早めに食べておくことに。これまた酸味が効いていてとてもおいしい。ゴミもオレンジなどと比べて少なく済むので、縦走時のデザートに最適。

で、最後は日本酒と少しのおつまみ。これは山に来ていながらオーバーカロリーの予感w

発電機の音がうるさかったが7時頃には停止され、テント場は本来の静寂に包まれた。


さすがに3泊目で疲れもいい具合に来ているし、お酒のおかげもあって今夜はよく眠れた。雨も夕食前後にパラパラ降った程度で大したことはなかった。20時前に就寝。