春の雪山・北ア涸沢山行 5/4・2日目(涸沢岳往復)

涸沢6:15⇒白出のコル(穂高岳山荘)8:35/8:50⇒涸沢岳9:25/10:30⇒白出のコル(穂高岳山荘)10:55/11:30⇒涸沢12:30


予定通り4時起床。途中何度か目が覚めたが、寒さはそれほどでもなく、十分に熟睡できた。



今日も朝から快晴! 早くもご来光目当ての人々が外に出てきている。


朝食は、「辛」(シン)ラーメン。その名の通りの激辛ラーメン。雪山に挑戦する日の朝食にはふさわしいではないか!と意気込んで食べたら、確かに辛かったw 体があっちっちになり、一旦ダウンもフリースも脱いでしまう。

その後、再び着込んで写真撮影に出かける。あいにく朝焼けはなかったが、朝日に照らされる穂高は神々しいものだった。



まだ5時過ぎだが、すでに数十人の登山者が奥穂高岳涸沢岳北穂高岳に向かってのトレースに取り付き始めている。


撮影から戻った後、寝巻きから行動着に着替える。今回は上下ともにスキーで使っていた冬用アンダーを着用。ミッドレイヤーに化繊シャツ・フリース、化繊ズボン。アウターにレインウェア上下。(要するに3層レイヤー) さらにスパッツ、アイゼン、ピッケル装着という完全装備。不測の事態に備えて、寝巻き用のフリースズボンとダウンジャケットも入れた。

今日の行動方針は、「仮に滑ってしまったとして、ピッケルを使えなくても勝手に止まるような軟雪であれば涸沢岳アタック。勝手に止まらないような危ない雪質(アイスバーンなど)ならすぐ撤退。もちろんピッケルは持って行き、下りで滑落停止の練習などをする」という方針だった。

前日の夕方に一緒に話をしていた方はすでに奥穂と北穂に行ったとのことで、「涸沢岳なら全く問題ない」と言っていた。実際今日になってみると、雪は朝からザクザクの軟雪、天候・予報ともに良好と好条件が揃い、まず心配はなさそうだった。



アイゼン・ピッケル、装備完了! 6時15分出発。

出発してしばらくして、日焼け止めを塗り忘れていたことに気づき、ザックから取り出してしっかりと塗る。これをしないと下山後に顔がガクブルな状態になってしまう。



このトレースをたどる。





数珠繋ぎの隊列。噂に聞いていた通りの「渋滞」に巻き込まれてしまった。特に急ぐわけでもないので、ペースメーキングのつもりでぼちぼち登る。



例年は小豆沢の直登と聞いていたが、今年はザイテングラードがメインのトレースのようだ。(小豆沢で雪崩が多発していたためだろう) ここは夏は岩の尾根らしいが、今はほとんどが雪に覆われている。滑らないようにしっかりとアイゼンを効かせながら、一歩ずつ高度を稼ぐ。

涸沢を出発して2時間ちょっとで、白出のコルへ到着。ここが奥穂と涸沢岳の分岐になる。コルには涸沢側から凄まじい風が吹き上げていたが、飛騨側に隠れるとほぼ無風だった。



登ってきた斜面を振り返る。それにしてもすごい風だ。



ここには穂高岳山荘がある。後ろに見えるのが奥穂への登山道だが、ハシゴ場や急斜面もあるため、涸沢岳よりランクが上になる。こちらは来年の楽しみに取っておこう。

穂高岳山荘でトイレと休憩を済ませ、いざ涸沢岳へ。登山道は飛騨側についているので、風はそれほど強くない。



基本的に夏道沿いのトレースを進むが、夏道露出3割・雪道7割といったところ。岩にアイゼンは違和感があって歩きにくいが、慣れると爪が岩に引っかかるおかげで滑らないのでありがたい。



後ろを振り返ると、奥穂がデカい。



そしてついに登頂! 涸沢岳3110m。まさか本当にたどり着けるとは。。登山とお空の神様のおかげでございます。

涸沢岳は、飛騨側は割となだらかだが、涸沢側は断崖絶壁になっている。普通の場所に座っている分にはまず大丈夫だが、端っこに座ると危険。要注意である。



こちらは常念山脈。正面に見えるのが、三角錐の山容で有名な常念岳。昨年9月に縦走した、蝶ヶ岳常念岳大天井岳の稜線がはっきりと視認できる。



そして、遠くに見えるのが槍ヶ岳。9月の縦走の終着点である。残念ながら、北穂が陰になってしまい、大天井岳〜西岳〜槍ヶ岳東鎌尾根は見えなかったが、自分の歩いたルートを見ることができて感動である。



はるか下方に涸沢が見える。



一般縦走路としては夏でも日本最難関ルートとされる奥穂・西穂縦走ルートに、なんと登山者を発見! 両側はまさに絶壁。ゆっくりと慎重に歩いていく。すげぇ・・・


1時間ほど滞在し、下山に取り掛かる。「登山は下りの方が危険」というのは大事な格言である。足をフラットに置いて確実にアイゼンを効かせながら下る。

穂高岳山荘でもまた少し休憩。焦って涸沢に戻ったとしても結局暇なのだw しばらく外のベンチで座って休んだが、風も収まってきていてとても快適だった。



そしていよいよ涸沢に向かって下降を始める。

下りはシリセードと滑落停止の練習を楽しみにしていたが、行く手にはザイテングラードの岩場が見えているのでまだ危険だったし、実際、他の登山者も普通に歩いて下っていたので、それに倣うことにする。

雪は非常に緩く、足を踏み入れるたびにくるぶしから膝ぐらいまでズボズボはまる。夏山では足・膝にかかる衝撃にいつも苦しめられていたが、この軟雪のおかげでその衝撃が全て雪に吸収され、恐ろしいほど楽に歩ける。アイゼンを引っ掛けないようにといった、雪山独特の注意はしなければならないが。

そして、ザイテングラードが終わると、行く手には岩は一つも見えなくなり、安全圏になる。先行する登山者たちが続々とシリセードを始める。半分暴走しかけているような人もいたが、軟雪に体ごとぶつかりながら滑り降りていく。見ていると、雪が軟らかいおかげで何の制動もしなくても勝手に止まるようだったが、滑落停止の練習もしたかったので、ピッケルを使って小まめに止まりながら滑り降りることにする。

ということで、自分も人生初のシリセードにトライw 本で読んだようにピッケルのブレードとシャフトを持って、いつでも止められる準備をして、ゆっくり慎重に滑り出す。意外とスピードが出ることに驚くが、少し滑ってはピックを打ち込んで停止を繰り返しながら、徐々に滑る距離を長くする。停止時にもいろいろな姿勢を取って滑落停止を練習してみる。



しばらく繰り返していると、すぐに慣れてきた。斜度も緩くなってくるので、ピッケルを使う頻度も減ってくる。こうなるともはや巨大な滑り台。(それも全長1.5kmぐらいのw) 全身で雪と戯れながら滑る感覚は、スキーとは全く別物である。



シリセードの合間に一休み。ふぅ。。



いや、ほんとに、


これは楽しい!!!!!!



もはやすっかり春山の虜であるw

途中で斜度が緩くなってしまったので、トラバースして適度な斜度の場所に移動し、また再びシリセード。何かと慎重に滑ったつもりだったが、テント場までたったの1時間だった。夏山なら1時間半〜2時間はかかるはずだ。これはたまらない。

テントに戻ったら、早速寝巻きに着替えて濡れ物を干す。完全に雪遊び後の子どもそのものであるw スパッツの締めが悪かったために登山靴に雪が入ってしまったため、タオルを押し込んで水を吸収させる。トイレやヒュッテに行くときのサンダル代わりに使うときは、ビニール袋を間に挟むことで寝巻き用の靴下が濡れないように工夫する。



ヒュッテのテラスへ行って景色を眺める。今日登ったトレースがはっきりと見える。



と、ヘリコプターがヒュッテに降りてきた。荷揚げではなさそうだったが、話によると屏風岩でクライマーが事故を起こして捜索中なんだとか。


おでんと熱燗に心惹かれたが、夕食が済んでからもう一度来ることにして、ひとまずテントに戻って夕食作り。

夕食は、アルファ米大盛・カレーライス・味付ツナ缶・ネギのピリ辛スープ。

これでも十分満腹だが、酒とつまみは別バラw 帰ってきたらすぐに眠れるように、一通りテント内の整理などを済ませて、再びヒュッテへ。

さすがに山岳価格ということで、おでん3品350円、熱燗500円(岩波・ワンカップ)だったが、もともと旅費が安いんだからとあまり躊躇せずに購入w 早速テラスに座って食べる。うまいっ。

ここでも他の登山者と話が弾んだ。最初はもう一人の単独の方と2人で話していたのだが、そのうち他の方も加わって盛り上がる。海外登山の経験者に、小学校の先生に、プロのガイドさんに、そのガイドさん主催の登山ツアーの添乗員の方に・・・(しかもそのガイドさん、長野でも名の通った人だという) もともと話し好きな人種であるし、殊に自分はきょうび山では珍しい若者であり、非常に珍しがられ、そして歓迎されるw 結局2時間ほどいろいろな登山者と話しこんでいた。

雪山を楽しみ、酒を楽しみ、会話を楽しみ、最後は歯磨きとトイレを済ませて、大満足の状態でテントに戻る。

天気は下り坂という予報が出ていたが、たしかに雲の量が次第に増えてきた。雨の中下山しなければならないかもしれない。

昨晩は若干寒い思いをしたので、今日はダウンジャケットを着て眠りにつく。