銀河鉄道999の世界観

最近、「宇宙戦艦ヤマト」と「銀河鉄道999」にはまっていて、レンタルショップで借りたり、ニコニコ動画のものを観たりしていた。

アニメとして傑作なのは評判どおり。特に自分のような宇宙好きにはたまらない。その作風と自分が鉄道好きということも合わせて、どちらかと言われれば999が気に入ったかな。23世紀の大都会の中をSLが走るシーンは新旧を上手く好対照させてて良い構図だね。あと何といってもメーテルが最高!

科学的考証はSFアニメにはそぐわないないと思うのでパスするべきだけど、その世界観を考えるのはなかなか悪くない。

思ったことは、ヤマトの世界観はだいぶ古びてしまったが、999の世界観は発表当時よりもかえって新しくなっている、と言うこと。

ただ、ヤマトが古いからと言って、それ自体は悪いわけではなく、現代で失われてしまった戦いと人間の世界観を思い出させてくれると言う意味ではすごい作品だ。


一方、999が描くメインテーマである「人間の機械化」というトピックは、21世紀になって急速に現実味を増していると思う。

現時点で問題になるのは、「機械化」と言うより「生命工学」によるものだが、例えばクローン、再生医療ES細胞あたりの技術は、人間を自然界ではありえない人工的な手法を使って行き永らえさせると言う点で、機械化に近いものがあると思う。つまり、999で23世紀で描かれる問題は、21世紀の現代において「医療格差の拡大」という問題によってすでに実現しているともいえる。

自分はいわゆる科学万能主義の考え方を持っている人種だ。既存の体制がいかにそれを拒もうとも、どこかにニーズがある限り科学と技術はその欲求を満たす手段を提供し続け、結果的に社会が変わっていく。科学と技術のみが歴史を揺るがし変えることができる。そのような考え方が、いかなるときも頭の中にある。

農耕、蒸気機関、電気、原子力、情報革命、生命工学が世界を変えてきたように、人間の機械化も例外ではない。考えるのは遅いし、腹減るし、ケガすれば痛いし、病気になるし、死ぬし・・・生身の体はとにかく不便だ。機械のほうが便利に違いないし、遅かれ早かれ人間は機械化への道を歩みだすだろう。それは必然の未来だし、分野は違えど生命工学の方向からその研究は始まっているのだ。

そして、自分自身もそのことをあくまで「当然」と捉えていたし、問題視することはなかった。必然はあくまで必然でしかなかったし、未来はあくまで思考実験の対象であって自分にとっては現実ではなかった。


その考え方と未来予想は今も変わらない。しかし、ニーズと技術のバランスだけにとらわれ、起こる事の善悪を考えていなかった、そんな自分の浅はかさを知った。あくまで自分は理学屋であり技術屋である、という妙な自負がそうさせていたのかもしれない。



人類の機械化に対する意見は人それぞれだろう。

しかし、望む望まざるとに関わらず、その意見の違いは将来の生体人と機械化人の対立軸となって明瞭に現れるだろう。現状は思考実験に過ぎなくとも、ニーズがある限りいつかはそれが現実になり、社会の実際的な問題となる。



銀河鉄道999は、30年前の作品ではあるが、テーマとしては今日という時代にあってかえって新しくなっている。作画、ストーリー、音楽、登場人物、セリフなどとあわせて、一度は見てみたい作品だ。