全宇宙共通

全く異なるバックグラウンドを持つ宇宙人との接触。彼らと話ができる共通の話題は何だろうか?

きっと政治家たちは怖気づくだろう。いかに地球人をコントロールするテクニックを持ち合わせ、仮に言語の壁がないとしても、価値観も思想も違う宇宙人には良くも悪くも意味がさっぱり通じないだろう。いや、そんなことより、政治家たちが真っ先に考えるのは、機密保持・混乱阻止・地球防衛あたりだろうか。なんと無意味なことか。

だが、科学者や技術者たちは嬉々として彼らとすぐにでも対話を始めようとするだろう。価値観や思想がどれほど違おうとも、「全宇宙共通の真理」という話題を彼らは豊富に持ち合わせている。言語の壁にしても、単純なパルス信号で数学的な話をしながら共通言語を育てていくことは十分可能だろう。むしろ、先に相手が電波を傍受して地球語を解析してくれているかもしれないし。

宇宙時代の政治は「科学」こそが主役になる。



宇宙のどこに行っても、1たす1は2だし、三角形の内角の和は180度だし、もっともシンプルな図形は正三角形と円だろうし、二次方程式の解をめぐって虚数も考えざるを得ないし、極座標系での回転軌跡を直交座標系に射影すればsinとcosが出るし、微分積分は表裏一体の関係だ。

ここから先はある程度の憶測が混じるが、おそらく進化論も他惑星の生物学にも通じるはずだし、発電機で一番合理的なのは回転機構だから電力もきっとsinカーブの交流だろうし、波形解析にはフーリエ変換が使われるだろうし、情報処理の基本にはきっとビットの概念が登場するだろう。

十分に発展した文明を持つ宇宙人なら、きっと人類と同じような科学的見地を持っているはずだ。数学と物理のみならず、自然科学と工学のかなり多くの分野は全宇宙共通のものに違いない。

もちろん、その文明は、表面上は地球人のものとはきっと大違いだろうし、特に思想面での違いは決定的だろう。だから政治家どもには宇宙人と対話はできない。その宇宙人の文明・文化には、人類の言葉で言い表せないような概念が無数に存在するのだろうし、逆もまた然りに違いない。しかし、その文明の科学と技術について掘り下げてみれば、人類の持つ文明とベースになるものはさほど違わないことが分かるはずだ。どんなに高度な技術も、科学の基礎法則と工学の基礎技術をなくしては成り立たない。



彼らはどんな文明を築いているのか。ある程度の答えは科学の見地といわゆる外挿法から引き出せるだろう。表面上は度肝を抜く文明であっても、地道な基礎は人類文明と同じだろう。

だが、彼らはどんな文化を持っているのか。それは完全な未知数だ。きっとどんな空想よりも奇異であるに違いない。