蝶〜槍縦走 9/11・4日目(東鎌尾根より槍ヶ岳へ)

天気:快晴 (夕方:霧、夜:雨)

ヒュッテ西岳7:05⇒水俣乗越8:25/8:30⇒ヒュッテ大槍10:25/10:35⇒槍ヶ岳山荘11:35/11:50⇒槍ヶ岳12:10/13:30⇒槍ヶ岳山荘14:00

午前3時ごろに一旦目が覚めた。雨が上がって外は静かだったが、実際に出てみて驚いた。そこにはなんと満天の星空! 天気予報からは予想もされなかったことだった。


真夜中の星空に槍ヶ岳の影がはっきりと浮かび上がっていた。(写真だとちょっと分かりにくいかも)


常念山脈もくっきりと。

トイレを済ませて4時半までもう一眠りし、朝食の準備を始めた。今日だけはアルファ米の三菜おこわだ。

今日は素晴らしい一日になりそうだ。


朝食を食べ終えた頃、いよいよ太陽が昇り始めた。





周りに誰もいなかったので、地べたにカメラをセットしてセルフでいろんなポーズで写真を撮ったりもしたw


この調子なら、晴天のもとで槍ヶ岳のピークを踏めるかもしれない。今日こそは「期待」して出発した。7時発。


いよいよ行くぞ〜

まずは高度を急激に下げる。このルートは岩場や梯子が多いので、西岳からストックはたたんでおこう。邪魔である以上に危険だ。

東鎌尾根は狭い尾根で難所も多い。梯子と岩場についてはゆっくりと慎重に通過すれば問題はない。むしろ、それ以外の「危険でない場所」でうっかりつまづいてそのはずみで谷へ真っ逆さまに落ちてしまうことのほうがはるかに恐ろしい。要注意!



じわじわ尾根を詰めるにつれて、槍ヶ岳の雄姿が確実に近づいてくる。雲が出てくる気配はいまだ全く無い。


ヒュッテ大槍に到着。ザックをおろして一休み。だいぶ軽くなったが依然20kg前後はある。その重さにもすっかり慣れてしまったw


さあ、いよいよ槍だ!

すでに昼に近いが、まだまだ雲は出ない。はるか高い場所を薄い秋雲が流れていくだけだ。これは頂上からの展望が楽しみだ。ヒュッテ大槍から1時間かけて槍ヶ岳山荘へ到着。あとは荷物を置いて空身で山頂まで往復だ。

槍ヶ岳の穂先までの道は、岩場や梯子が多いが、いずれもしっかりホールドできるので慎重に行けばまず問題はない。もちろん落ちたらタダでは済まないだろう。


道はこんな感じ。岩はしっかりしているので三点支持で行けばまず大丈夫。ホールドが無いような場所にはピンが打ち込まれていてそれを掴んで登る。傾斜はだいたい45度ぐらい。


登りの途中から山荘と笠ヶ岳。青空と秋雲が素晴らしい。

「最後に梯子を二つ上がったら山頂ですよ!」という下山される方から聞いた。天候の安定しないこの時期に、快晴のもとで槍ヶ岳のピークを踏めるとは夢のような話だ。


これが最後の2段の梯子。左が上り用、右が下り用。ピークシーズンはいわゆる「登頂待ち」の列ができるらしいが、今日はガラガラだ。

最後の一段まで慎重に。何せ後ろは断崖絶壁。別段怖くはないが、梯子の途中から後ろを振り返るとなかなかの高度感だ。これはすごい。



丸4日の旅路を終えて、ついに槍ヶ岳登頂。3180m。もちろん今回の最高点。


槍ヶ岳の山頂はこんな感じ(後ろは穂高) 山頂は非常に狭く、安全に留まれるのはせいぜい10人が上限。

さすが9月のオフシーズンとあって、好天にもかかわらず登頂者は非常に少ない。夏休みなら次の登頂者ですぐに場所を空けなくてはならないそうだが、今日ばかりは居合わせた登山者たち同士で楽しく談笑しながら、山座同定や山話や写真撮影などをしてのんびりと過ごした。「山に来ればみんな家族」と誰かが言っていた。山とは本当に素晴らしい場所だ。

縦走起点の蝶ヶ岳では横一列に見えていた穂高連峰が、ここでは南方向へ縦一列に並ぶ。東方向にはこれまで延々歩いてきた常念山脈が見える。蝶ヶ岳常念岳大天井岳、そのさらに左に燕岳。北方向には後立山連峰がはるか遠くに見える。西方向は槍・穂高とは雰囲気の違うゆったりとした緑の山塊が広がっている。裏銀座方面だ。来年目指したいロングコース、立山〜薬師〜槍のルートもはっきりと見えた。


穂高をバックに記念撮影。かなりベテランと見えるデジ一眼使いの方に撮って頂いた。いい構図で撮っていただいてありがとうございます。感謝、感謝です。


山頂では携帯がつながったので、無事到着の旨の連絡と、天気予報の仕入れをすることができた。今夜から雨で、明日は午後からは晴れるようだ。明日のテント撤収は覚悟しよう。

山頂に1時間半近く留まって風景を満喫した後、山荘へ下山をはじめる。ひとまずこの時点では依然天気は素晴らしい晴れ空。テント場は空いているとのことで場所取りも後回しに、山荘のテラスでのんびり他の登山者たちと話していた。


さすがに15時ごろには寒くなり始め、雲も出始めたので、テントを張りに行った。普段は受付時に場所指定となるそうだが、今回は「自由席」だった。張り終えた頃には青空が隠れ、本格的にガスが湧き上がり始めていた。これはちょうど良かった。
なお、今日のテントは6張りほど。

ちなみに、このとき一緒に話していた方がたまたま生命科学系の研究者をやっておられる方で、いろいろな興味深い話を聞かせていただいた。山の上に来て、これまた深いサイエンスの話を聞けるとは思わなかった。フナは実質的な「クローン繁殖」で遺伝子は全く組み変わらないにもかかわらず、苛酷な環境に強い進化を遂げてきたそうだ。その方は、そういった遺伝子の性質を生かした応用研究を行っているそうだ。その他、性染色体のYY組(Super Male)などなど。すごいぞ槍ヶ岳!(違)


晩ご飯は、アルファ米、味付けツナ、たまごスープ。あとは行動食などの余りを加えて盛大に。山荘で化学物質入り飲料水を買って祝杯をと思ったが、あいにく麦を使ったそれしかなく、自分の好きなフルーツ系のそれは無かった。諦めて化学物質抜きのCCレモンにしたが、それでも山の上で飲むジュースは最高だ!

夜にかけて雨風共に強くなり始め、テントへの浸水が心配された。テント前に水溜りができ始めていたので、うまく流れ出すように側溝を掘った。雨はその後も降り続いたが、そのおかげで、しばらくするとすっかり水が引いていた。特に真夜中の雨が強く、後から調べたところ、ピーク時には1時間雨量12.5mmだったとのこと。(槍ヶ岳の気象データが公開されている