Memories of ISS 2005

高校2年生のときのISSの思い出を、今はなき旧ブログからのコピーで載せることにしました。余分な話は一部削ってありますが、いずれにしても相当長いのでご注意くださいw
プロローグ:合格報告(2005/04/30)

みなさんに報告をします。先日、「内閣総理大臣オーストラリア科学奨学生」というものに合格しました。

この「オーストラリア奨学生」というものは、日本全国から10人を選び、日本政府とシドニー大学物理科学財団が費用のほぼ全額を支給して(奨学金)、7月にシドニー大学で行われる「International Science School for High School Students」(略称ISS)というものに派遣するプログラムです。隔年で行われており、世界中から100人以上の高校生が集まってきます。ちなみに、今年のテーマは"Waves of the future"です。

「全国から10人」ということで、府県単位の予選(書類選考)と、全国単位の最終選考(東京での面接)という形であわせて二回の選考が行われました。

その結果、最終的に合格の通知がきました。


ISS本編(2005/07/02〜16)

7/2: 0日目 - 出発から飛行機まで

朝は9時ごろに起きて、十分余裕を持って地元の駅を12時過ぎに出発しました。新幹線の事情があって、今回は米原からではなく京都から少し大回りをして東京に向かうことにしていました。

京都から新幹線に乗り一路東京へ。ただし、東京では改札を出る時間はなく、さっさと成田エクスプレスに乗り継ぎました。成田エクスプレスはなかなかカッコいい電車ではあるんですが、車内の空気がどんよりとしていてやや気分が悪かったです・・・・・・

そして、車窓は空港に近づくにつれて田舎になっていきます・・・本当にこんなところに空港があるのだろうか!? そんな心配をよそに、列車は成田を通過すると本線から外れて地下へ潜り、しばらくすると空港第2ビル駅に到着しました。

ということで、夕方5時過ぎ、成田空港に到着しました。

ともあれ、成田空港に無事着くことが出来ました。集合までしばらく時間があるので、スターバックスで時間をつぶすことにしました。何しろ、機内食は夜遅くまで出ないそうなので。

その後、少しトラブルがあったものの予定通り生徒10人&引率先生が集合して、出国・搭乗手続きを済ませて飛行機に乗り込みました。

夜9時過ぎ、飛行機は成田空港を離陸、日本からシドニーへと飛び立ちました。


7/3: 1日目 - 到着日なのに行事びっしり

翌朝、シドニーに降り立つと空は雲ひとつない快晴で、しかも、思ったほど寒くなく、ちょうど11月の京都のような感じでした。

そこで引率の先生が曰く。「実は俺は晴れ男でな、俺が来るといつも晴れるんだ。」・・・その一言でこの晴天の理由が分かりました(笑) 結局この青空は5日間連続で続くことになります!

迎えの車にトラブルがあったので、空港のバス停で1時間ほど待たされ、何とかシドニー大学のWomen's College(寮)に到着しました。

昼間はシドニーの市街地に行って、食事&買い物。食事はシドニーの「中華街」でした(爆) ちなみに、スーパーで買ったDairy Milk TRIPLE DECKERというチョコレートがなかなかおいしかったです。(結局余って日本に持ち帰りました)

夕方には参加する140人全員が召集されてInfomation Session(開校式ではない)が行われました。が、旅疲れが相当溜まっていて、かなり眠かったです(汗)

Infoが終わると、各グループごとに集まって自己紹介などがありました。が、英語がさっぱり分からず、まるっきり「おとなしい日本人」の典型を見せてきてしまいました。(1週間後には大幅に進化します!)

その後は夕食でしたが、そのときはここの夕食のヤバさには気づきませんでした。おそらく、その時は英語が分からなくて食事の味どころじゃなかったんだと思います(汗)

食後はクイズ大会が始まりました。着いた初日にこれなので、「マジかよ・・・」という感じでした。結局終わったのは10時ぐらいになってからでした。いくらオーストラリアだからって、初日にこれはちょっとハードすぎでしょ!?

とりあえず今夜はシャワーを浴びて、ざっと予習をしてばったりと眠りに着きました。

さあ、いよいよ明日からは講義がスタートします。


7/4: 2日目 - The first lecture

とりあえず、朝一番は大学内のちょっとした緑地で写真撮影会があって、全体の集合写真と各国ごとの写真をとった後は、しばらくフリータイムになっていました。(このとき「必要ないだろう」と思ってカメラを持ってくるのを忘れてしまった。惜しいことを・・・)

その後は開校式が行われ、間に休みを挟むことなく、最初の講義が行われました。Frank Seebacher博士による"Radio telemetry in the study of wildlife"というもので、電波を使うことによってクロコダイルなどの動物の行方を追い、離れた場所から生態調査をすることが出来る、というのがメインテーマでした。

講義の行われたのはSlade Lecture Theaterという、いわゆる階段教室型のプレゼンルームで、150人も入るとさすがに狭く感じました。室内はこんな感じです。

講義としては、英語は結構やさしめでしたし、一応予習もしていたので、内容全体も何とか理解できました。また、冒頭での温暖化の話について「100年単位の気温の急激な上昇が、数億年単位にも影響を及ぼすのか」という質問のネタも出てきましたが、明らかにメインテーマからずれていましたし、やはり最初は様子を見たいと言う気持ちもあったので、今回はパスしました。

しかし、この後の講義は英語・内容ともに難解なものが連続し、このことを後で後悔することになります・・・

寮での昼食をはさんで、次の講義へと出かけました。寮からPhysics Buildingへ向かっていく道の景色があまりにもきれいだったので一枚撮ってみました。右手に見えるのが講義の行われるPhysics Buildingです。

午後の講義はHalina Rubinztein-dunlop教授による"Catch, Move and Twist with Optical Tweezers : Biophotonics at work"でした。要するに、光を使うことによってモノを動かしたり、切断したり出来るという話のようでしたが、英語がまず分からなかった上、内容も午前の講義よりも遥かに難解だったため、さっぱりでした。まあ、テーマは非常に興味深いものでしたが。

その後に続いた、アクティビティ(グループごとに分かれて活動するもの)では"To err is human"というトピックで、なぜコンピューターが人間の言葉を容易に扱えないのか、というテーマが取り上げられました。前半は"He made her duck."という例文が取り上げられたり、「2001年宇宙の旅」で有名なあの曲が流れたり、HALと乗組員の会話が出てきたりと、結構楽しくやっていましたが、途中から難しくなったため、後半はさっぱり分からずでした。


昨日は夜遅くまで行事が詰まっていたために、飛行機の旅疲れも取れていなかったので、今夜は早めに寝ることにしました。(この夜は8時間近く眠れましたが、結局この日以降はほとんど毎日6時間睡眠で乗り切ることになります。)


7/5: 3日目 - 日本語、大ブーム!?

朝のアクティビティは、DVDの映像と音楽にあわせて教授が一人劇をやるというものでしたが、どういうことなのかさっぱり分かりませんでした。確か、このころは一番英語で苦労していた時期だったはずです。

今日の講義:

午前:昨日の"Catch, Move and Twist with Optical Tweezers"の続き。

午後:Clive Baldock博士:"The Treatment of Cancer Using Lonsing Radiation"。タイトルの通り、放射線を用いたガン治療の話でした。

いや、マジで分かりませんでした(汗) その後に続いたトークもまたしかりです。とりあえず、授業としては、今日は2週間の中でも最低の理解度でした。

あと、夕食前にはPeterとEdmundに将棋を教えました。本当に「異文化」が好きな人たちで、基本ルールと駒の動きなどはすぐに覚えてしまいました。まさに、恐るべし・・・です。

ところで、午前のアクティビティで一人劇をやっていた教授が、夕食のときに食堂の前でオリジナルのTシャツを販売していました。

で、その教授が日本に住んだ経験があると聞いていたので、少し立ち話をしました。僕のほうから「京都の学校に通っています」と自己紹介すると、「あ〜京都か。私は伏見区の公立高校でネイティブの教員として働いていたよ」とのこと。おいおい、伏見区って・・・・・・まるっきり僕の高校のある区域じゃないですか! さすがに高校の名前を言っても「知らないな・・・」と言われましたが、高校のある場所の地名を言ったら「ああ、あそこね」とうなづいていました。思いがけないところで身近な人に出会った気分でした。(余計な事を書きますが、これだけのデータがあると、分かる人なら僕の高校も分かってしまったりします・・・)

夕食の後は、希望者参加のSocial Activityとして、映画「宇宙戦争」を見に行きました。まあ、映画自体は特筆するほど面白くもなかったです。どうやら俳優の名前で売れていただけのようで・・・

ところで、ISSでの公用語は英語ですが、何かと中国語を耳にすることもく、準公用語的な立場にありました。じゃあ、その中での日本語の立場はと言うと・・・・・・一種のブーム、でした(笑) 抑揚をつけまくる英語を普段から話す彼らにとって、棒読みに近い日本語の発音はいろいろな意味で interestingでありbeautifulであり、またfunnyなのでしょう。結局、このブームはISSの最終日まで続きました!

ひとまず、最初に挨拶(「こんにちは」など)と「私の名前は〜です」あたりの定番を押さえたところで、後はひたすら弾けて「俺はかっこいい」とか「京都愛してる!」とか「パイ投げ」なんかも教えました。挙句の果てには「お前らみんなふざけすぎ」とかも教え込んできましたし、「おおきに」とか「〜やろ」、「〜やで」あたりの関西なまりもみっちり教えてきました。あと、誰が教えたのか知りませんが、「君のペ○スは小さいですか?」なんていうとんでもない質問をする輩まで現れて、その時は笑顔で手を振りながら逃げました(笑)


7/6: 4日目 - 初質問!

朝一番のアクティビティは数学でした。数学自体はかなり好きなのですが、定番の英語の問題と、数列をまだやっていなかったこともあって、いまいち理解できませんでした。まあ、昨日よりはずいぶんましになりました。

午前の講義はSomon Carlile氏の"The psychophysics of real and virtual auditory spaces"でした。いや、、、本当にさっぱりでした。しかし、次の講義でやっと火がつくことになります。

ところで、今日も青空が広がっていました。朝は少し寒いぐらいの締まった空気で、昼はぽかぽかした陽気といった感じで、相変わらず最高の天気でした。写真はPhysics Building前の広場です。あと、昼休みにインターネットを使う機会を得られたので、両親とクラスのメーリングリストにメールを送って、ブログも英語で軽くアップしておきました。(その記事はまだ残してあります)

午後の講義は、Martijin de Sterke氏の"Telecommunications : the here and now"でした。いわゆる情報工学の分野で、bitとかbyteなどといった情報を表す単位をlogによる数式で書き表すところからスタートして、光通信での波長とデータ量などの関係、現在のキャパシティでどの程度のデータがやり取りできるのか、といったことが講義されました。

その中で、「人間の記憶はデータ量にして100〜200MBだが、人間そのものをテレポートさせるにはその10の数十乗倍ものデータ量が必要だ。」という話が出たので、講義の終わりの質問タイムに「なぜ人間の記憶のサイズが100〜200MBだと分かるのですか?」という内容で質問をしました。質問はもちろん英語でしなければなりませんし、質問をするのは日本人では初めてだったので、その時はかなり緊張しました。

一回目でアドリブの英語を使う自信はなかったので、あらかじめノートに英作文をした上で、隣の人に「これでOK?」と聞いてから手を上げました。英語では"How can you conclude that the size of human memory is about 100MB? What is the basis?"という、非常に蛇足で効率の悪い英文をかましてしまいましたが、教授はちゃんと理解してくれたようでした。教授が答えたところによると、「心理学者の調査もあったが、科学的には脳のニューロンの数を調べれば分かる」とのことでした。

その後、オレンジグループは生物の実験がありました(アクティビティ)。植物の葉緑素を取り出して、可視光線を当てたときの吸収率を調べて、その葉緑素がどの植物のものかを当てるというものでした。Katが丁寧に説明してくれてよく理解できましたし、内容も結構面白かったです。

で、葉緑素を薬品に浸す待ち時間に実験風景を一枚。僕を含む4人のグループ写真も撮りましたが、一枚はぶれてて、もう一枚は僕の頭に指が生えていたので載せません(笑)

ともあれ、質問ができてとてもいい感触を掴むことができました。ISSもなかなか楽しくなってきました。


5日目 - Science & Engineering Challenge

いわゆる「モノづくり」企画で、種目は5種類以上ありました。その中でも僕が振り分けられたのが、Gold Feverという種目でした。早い話が「橋を作って耐久性を競う」というもので、AndrewとBron(どちらもAustralian)との3人チームになりました。(後で分かったことですが、どうやらGold Feverは一番の大物競技だったようです)

橋といっても、1から10まで全部作るわけではなく、写真のような感じで橋の本体部分だけを作ります。この上に鉄板を敷いて、重りを載せたカートを通過させて競技をする形になります。結構シンプルですが、実際に作ってみると、かなり楽しかったです。本当に橋の技術者になったような気がして(笑)


Andrewはすでに一度やったことがあるということで、大枠の構造は彼のアイディアで行きました。が、さすが西洋圏の人、仕事がとても荒い! だから僕の仕事はもっぱら細かいところの詰めとアイディア提供でした。特に、重量を80g以内に抑えたかったので、無駄なテープをはがしたりして重量を調整したりもしました。

で、その成果が下の写真です。僕のみみっちい苦労の結果、見事に80gぴったりに収まりました。ともあれ、日本人の細かさと丁寧さ、そしてみみっちさを最大限にアピールすることができました(笑)

ところで、Morning Teaに行くために教室の外へ出たとき、たまたまRobertさんと出会ったので一緒に写真を撮ってもらいました。Robertさんは、講義の質問タイムで手を上げた生徒を当てる役をしたり、全体の司会役を務めたりしている方で、ISSの主催者であるHarry Messel氏に次ぐISSのナンバー2です(笑) 昨日は僕が手を上げているのを見て、「OK、次は君な。」という顔をして合図してくれたりしました。(右がRobert氏、中央のhaytoはもちろん2年前の姿ですw)

6日目 - はじける

午前のアクティビティはPhysics Tour #1で、いわゆる研究室見学のようなものでした。トピックは主にプラズマと光子についてで、高分子化合物(ex.ポリ塩化ビニル)の組成を調べたりするのを実演してもらったりしました。

ところで、驚いたことに、訪れた研究室にMizunoさんという日本人の方がいました。1年前からシドニー大学にやってきて研究をされているとのことで、話を聞いた限りでは、どうやら日本企業からの派遣のようでした。(後日メールをいただきました。ありがとうございます。)

その次の講義は、水曜日に続いて同じ教授(Martijin de Sterke氏)が講義をしました。テーマは"Telecommunications : Looking to the Future"で、結構期待をしていたのですが、内容が進んで難しくなったせいもあって、前回ほどの感動は得られませんでした。残念・・・ とはいっても、部分的に理解できたところをかいつまんでみても、やはりいい授業に変わりはありませんでした。

昼休みには、親と学校のクラス宛に手紙を出しに行きました。が、郵便局の窓口で聞いたところ「日本までは7〜11日かかる」と言われてしまい、「おいおい、自分の帰国よりも遅く届くかもしれないのか・・・」とがっくりきましたが、とりあえず送りました(笑) 実際には、親には次の週の水曜日に届き、学校にも金曜日には届いたそうです。(夕方着だったので、結局、数人しか読めなかったとか)

午後の講義は、Lidia Morawska教授の"The Science of the Aerosols we breathe"でした。前日にテキストに赤線を引いたりして予習をみっちりやっていたので、内容はかなり理解できました。テキストにもあった、「空気中のAerosolが地球温暖化にも影響する」ということが気になっていたので、そのことについて質問しました。教授がおっしゃったところでは、「5年ほど前までは温室効果ガスしか取り上げられていなかったが、近年はAerosolによる影響も注目されてきている。しかし、Aerosolに関する研究が始まったばかりなので、比較してどちらが深刻なのかはまだ分かっていない。」とのことでした。
質問といえば、Shuさんが「黄砂が地球温暖化を抑制すると聞いたが、本当ですか?」という質問をしていました。Kazushigeくんも手を挙げていたそうですが、残念ながら当たらなかったそうです。

夜はBush Danceがあったりしました。楽しかったこは楽しかったのですが、こっちの人のノリは日本人の比ではなく、ついていくのに苦労しました(汗) 半分楽しんで、そして、半分無理して、Bush Danceはとにかくはじけまくってきたため、更にテンションがあがってきました。思い出せば、このころはいよいよ本格的に壊れはじめた時期でした(爆)


7日目 - Sydney Tour & Harbour Cruise

今日は希望者参加のSydney Tourに参加した後、夜は全員でHarbour Cruise(&船上パーティー)でした。天気はというと、いまいちだった昨日から一変して、真っ青な青空が広がっていました。(午後は崩れて少し雨が降りました) ちなみに、Sydney Tourには自分のポカで参加できなくなりかけたのですが、引率の先生が機転を利かせてくださったおかげで、無事に参加できました。本当にありがとうございます・・・

Sydney Tourでは、Opera House、Harbour Bridge、Sydney Towerと、シドニーの「定番スポット」を巡りました。写真をいっぱい載せておくことにします。写真はクリックすると大きくなります。

Harbour Bridgeです。一番上ではイギリスとオーストラリアの国旗がはためいていました。

定番のOpera Houseです。太陽の光が猛烈に強かったです。館内の見学もしました。

Harbour Bridgeの展望台からOpera Houseと海を撮りました。絵葉書はウソではなかったようで・・・本当に驚きました。ちなみに、この写真がこの2週間でのベストショットです!

公園で昼食をとっていて、鳥に餌付けをしていたところ・・・こんなに増えてきました(笑) この後、結構な勢いで雨が降り出しました。

Sydney Towerより。さっきまでの雨はどこへやら、また晴れ空が戻っていました。誰かが"The weather in Sydney is strange."と言っていました。

日が落ちたころ、ISSの生徒全員が港に集まって、Harbour Cruiseに出発します。

食事が一段落すると、ダンスパーティーが始まりました(ディスコ)。みんなのテンションはBush Dance以上で、最初はなかなか入っていけませんでしたが、後のほうは無理やり紛れ込んではじけてました(笑) このハイテンションを維持できる彼らは化け物ですw

8日目 - Bush-Walking

今日はBush-Walking、いわゆる山登りに参加してきました。昨日とは打って変わって曇り空が広がり、強風が吹き荒れる寒い日でした。「これはさすがに中止だろう」と思っていましたが、なんと催行。昨日に続いて、写真をいっぱいアップしておきます。

写真は斜度のゆるいところですが、足を滑らせたらただではすまないような場所がいくつもありました。日本なら絶対こんなところを登山道に使ったりはしないでしょう・・・(2007年加筆:その判断は小学生時代に登ったような里山に限った話で、本格的な山ではもっと危険なところがごまんとあることを、山を始めて嫌というほど実感しましたw なんといってもあの白馬岳の断崖絶壁は・・・)

昼食はRuined Castleという岩の塊のある場所で食べました。ここはかなり危険なところで、下を見下ろすとこんな感じです↓

てなわけで、落ちたらただでは済みません。風も強かったので、岩の上で立ち上がることは出来ず、岩に張り付くようにしながら写真を撮ってました。これまた日本の観光地なら絶対に立ち入り禁止になっているようなスポットです(汗)

そこからさらに歩くと、こういう切り立った崖に沿って道が続きます。こんな地形がどうやって出来たんでしょうか。


9日目 - 電子顕微鏡

遊びまくった土日が終わり、今日から通常授業に戻りました。

午前のアクティビティは"University Tour"で、シドニー大学の中をめぐるツアーでしたが、なんと今日に限ってカメラのCFカードを入れるのを忘れてしまい、午前は一枚も写真を撮れずじまいでした(泣)

その後、午前の講義がありましたが、当時つけていたメモを見てもテキストのレクチャーリストを見ても、レクチャー名が見当たりませんでした。そのとき取っていたノートを見る限りでは、環境汚染についての講義だったようです。

気を取り直して、午後の講義は再び情報工学の話で、Judy Kay助教授による"Creating and overcoming imvisibility : scrutably personalised ubiquitous computing"というテーマで、要は最近話題の「ユビキタスコンピューティング」というものについて紹介するものでした。例えば、実際に写真や資料などを動かす感覚でディスプレイにタッチして使う会議用のコンピューターだとか、テレビ電話の発展版だとか、そういうものです。

ただ、この講義では人間が主体的に使うための単なる「道具」としてのコンピューターしか紹介されなかったので、完全に自動判断をできるするには?という意味で、「ユビキタスコンピューターを作るなら、どうやって『人のあいまいさ』(ambiguity)を克服しますか?」という質問をしました。でも教授が何と答えてくれたか忘れてしまいました(汗) ちゃんとメモっておけばよかった・・・

その次はアクティビティで、何種類かの顕微鏡を見せてもらいました。光学顕微鏡、TEM、SEMなど。教授に話しかけると親切に質問に答えてくれたりと、これまでのアクティビティで一番面白かったと思います。

SEM(走査式電子顕微鏡)です。表面を見るための顕微鏡です。断面図を見る場合は、TEM(透過式)を使います。

「これはいつ開発されましたか?」と聞くと、教授が電子顕微鏡の歴史についていろいろと説明してくれました。

夜は、Sydney Observatoryというものに参加しました。いわゆる天体観測で、天文台のようなところに連れて行ってもらって星を見ました。星はあまり見ることが出来ませんでしたが、立体的に宇宙を旅できる!的なノリのビデオはなかなか面白かったです。こういうOptional TourでもScientificなのはさすがISSといったところ。が、みんな口々に「しかし、これであの値段は高いぞ」と言っていました。残念ながら同感w


10日目 - 中国語!

実は、昨晩、Takashiが僕の部屋に「風邪でしんどい」といいに来ていて、そのときは少しおしゃべりをして、その後僕は普通に寝たのですが、彼は一睡も出来なかったらしく、朝から引率の先生と一緒に病院に行ったそうです。お大事に・・・(ちなみに、医者には「薬を飲むときはジュースで飲んでもいいよ〜」と言われたそうな・・・)

幸運にも、僕自身は体調面も含めてすべて特に変わったことはなく、かなりこっちでの生活に慣れてきたころでした。

あんまり強い印象は残っていないんですが、一応講義のリストを乗っけときます。

午前:"Seeing in the Nanoworld" by David Cockayene 教授

午後:"Understanding Brain Dynamics" by Peter Robinson 教授

あと、シンガポールからの人に中国語を教えてもらったりしました。シンガポールではほとんどの人が英語と中国語の両方を話せるらしいです。で、僕らしく、ろくな単語を覚えませんでした。具体的には「バカ」とか「共産党」とかです。この後、そのシンガポール人には僕がバカなことをするたびに、中国語で「サン・チン・ピン」と言われるようになるわけです(笑) そこで、ありあわせの中国語の単語を組み合わせて・・・以下ドラッグ⇒まるっきり冗談で、中国人のAndyに「共産党、バカ」(Gong-chan-dang san-chin-pin)と言ったら、「いや、本当にそれは笑えないからやめてくれ(汗)」と言われました。やっぱり中国では共産党は政権党なので、こんなことを口走ったら逮捕されるんでかね(汗) つまらないネタを失礼しました・・・


11日目 - 興味深い講義&Reception

午前の講義は、昨日に続いてDavid Cocayne教授による"Building in the Nanoworld"でした。一体どうすればナノテクを有効に使うことが出来るのか、そしてそのための技術、といった内容で講義が進みました。非常に中身の詰まった講義でしたが、全体的な難易度はかなり高かったと思います。

午後は、Andrew D Short教授による"Wind, Waves and Beaches"という講義で、これもまたかなり面白いテーマでした。風と波の関係、水の動きが地球規模でどのようになっているのか、波と海岸の形の関係などなど、とても素朴で親しみやすいテーマを深く掘り下げており、質問タイムには手を上げる生徒が続出しました。僕も「温暖化で地球規模の水の流れは変わるか?」という質問を出そうとしましたが、先に他の生徒が同じ質問をしてしまいました。やっぱりベタな質問はするもんじゃないですね。質問というものは第一にとっぴを目指さなくては面白くありません(笑)

この二つは、今講義テキストを読み返してもかなり面白いテーマだったと思います。

その後は、火星についてのギャグが出たりするトークがあり、かなり楽しませてもらいました。(笑えるネタというのを文章で表すのは難しいです)

いよいよISSも終盤に差し掛かり、夕方には、ISSのために寄付をしてくれた人によるReceptionが開かれました。「偉い人が前!生徒は後ろ!」といった席次のようなものは一切無く、ISSの生徒が各国の政府関係者や寄付者の方々に挨拶回り&おしゃべりをしていました。

雰囲気的にはこんな感じです。その後の式では、中国人が「リーダーシップ賞」を取り、テレビの取材を受けていました。


12日目 - 寝坊した!

朝はタイトルの通り、一発やらかしてしまいました。普段は7時に起きているところが、8時まで寝過ごしてしまいました。集合は8時半! 30分しかありませんでした。急いで顔洗い&歯磨き&コンタクト装着を済ませて、朝食を食べ、集合には何とか間に合いました。

午前のアクティビティはCUDOS(Center for Ultrahigh-bandwidth Devices for Optical Systems)の研究室見学に行きました。4日目にあったCUDOS所属の教授の講義がよかったので、この見学には結構期待していましたが、期待したほどでもありませんでした(汗)

午前の講義は、Elanie M Sadler教授による"The ever changing life of galaxies"でした。内容は名前の通りなわけですが、銀河を見るときに光の波長を変えると(電波・可視光・X線など)同じ銀河でも違う見え方になる、というのは印象的でした。教授が見せたスライドについて、一部疑問がわいたので、久しぶりに質問をさせてもらいました。(10億年前までは水素が蓄積された時期で、それ以降、水素自体の重力で核融合が始まり星が出来始めたそうです) ちなみに、Elanie教授には昨日のReceptionでたまたま会ったため、挨拶を交わしていました。

昼食を取りに寮に帰る途中。あまりにきれいだったので撮ってみました。

午後の講義は、Joseph Hope博士による"Quantum Mechanics : The Wild Heart of the Universe"でした。

その後のアクティビティは、講義室でISSのスタッフによる"Science Show"が行われました。炎色反応、水素の爆発などの簡単な実験がほとんどでしたが、印象的だったのは、卵を支えにして板をかぶせて、その上に人が乗っても卵が割れない、というものでした。「卵は縦の力に強い」といいますが、これにはさすがにビックリ

前の席にはこんな人も。何を隠そうスタッフでしたw

夜はConcert Nightというイベントがありました。各国ごとや有志による発表があり、日本からは「ソーラン節」を発表しました。他にも、日本人の有志からは、Yojiが声楽、Takashiがピアノ、Jumpeiが手品と、いろいろ面白いことをやってくれました。7時半から11時半まで続きましたが、どの発表も非常に面白く、時間の長さを全く感じませんでした。


13日目 - 幸せな時間

いよいよ授業は最終日になりました。

今日の午前はアクティビティも講義も講義室でありましたが、どっちも全然面白くなかったので、みんなでテキストを回してサインを書き合いっこしていました。最終的に、テキストの1ページ目がサインで埋め尽くされ、サインの数は日本人生徒ではダントツトップになりました(笑)

午後の講義は、昨日に続いてElanie教授による"Monsters lurking in the center of galaxies"でした。銀河の中心には非常に大きなエネルギーをもった何かがある、それは「AGN(活動銀河中心核)」だ!という内容。講義ではクエーサーについても触れられ、「クエーサーはどのぐらいの大きさですか?」という質問もしました。(テキストに書いてなかったのでつい気になった) 教授によると「かなり小さいけど、光が数日分に進む距離ぐらいの大きさがある」とのこと。一つの天体にも関わらずこの大きさ、しかし教授は「小さい」と表現する。まさに「二段階の想定外」。くだらない些細な質問からでも得るものは大きい、そんな気がします。質問はこれで最後になりましたが、結局気がつくとこの2週間で―この大きな恥知らずバカが!―全部で5回も質問をしていたのでした・・・

普段ならこの後にアクティビティがあるんですが、今日は省略で、夕食までは自由時間になりました。その間に、引率の先生と日本人の何人かで一緒にシドニーの中心街まで買い物に出かけました。キーホルダーやお菓子を買い込んだりして、おみやげを一通りそろえました。

買い物を済ませて寮に戻ると、ホールではドリンクが準備され、「夕食ができるまでドリンクを飲みながらおしゃべりを楽しんでください」的な時間になっていました。もちろん記念写真を撮る時間でもあるわけで、僕もいろいろな人と写真を撮りました。


左がEdmund、右はhaytoです。なんとなく青春?w


スタッフたちです。本当にお世話になりました!

その後、夕食が"Farewell Dinner"という豪華なディナーが振舞われ、同じテーブルには、Sayaka、Ayaka、Shu、Takashi、YukiISSで友達になった生徒たちが一緒に座りました。楽しい夕食。二週間の出来事や、面白い笑い話や、数学の話や、将来の話など、いろいろなことを語りました。

そして、その後は閉校式。お世話になったスタッフたちの紹介があり、その後各国の代表者が出て全員分の終了証書を受け取りました。

その次は、各賞の授与です。

最初は「ISSに大きく貢献した生徒」の表彰で、各国から一人ずつが選ばれ、表彰されていきました。何ヶ国かが終わった後、「From Japan, Hayato Hattori」という声が聞こえました。その瞬間、大きな拍手。同じテーブルに座っていた人たちは、特に大きな拍手をしてくれました(ありがとう!) 賞状と一緒に、科学系の辞書ももらえました。賞は「賞品に本を贈る」という意味で"Book Prize"という名前でした。これは、「日本人最優秀賞」と同等のものです。本当に感動! ありがとう、ありがとう!

次は、「他の生徒を勇気付けた生徒」("Students who encouraged others"だったと思います)の表彰で、僕の知っている人では、PeterとQooが表彰されていました。実際に、彼らには大いに勇気付けられ、そして大いに助けられました。彼らがいなければここまでISSを楽しむことはできませんでした! おめでとう!

この時点で、すでに夜はだいぶ更けてきていましたが、イベントはさらに続きます。ホールでディスコです。これはさすがにOptionalで強制ではありませんでしたが、こりゃもう行かない手は無い!ということで、日付が変わる直前まで踊り倒しました。

さすがに踊りっぱなしは疲れるので、途中で外に出て休憩です。すると、近くにいた中国人のAndyが話しかけてきました。日中問題についてでした。10分ほどの短い時間でしたが、僕は「日本人は責任がある」「日本の与党が再び戦争に進もうとしている」など、現状と自分の意見を話し、お互いに意見交換をしました。最後に「俺たちは友達だ。日本と中国も友達だ」という約束を交わし、ディスコへ戻りました。

結局終わったのは日付が変わる直前! シャワーを浴びたり、歯磨きをしたり、荷造りをしたりしていたので、結局寝たのは2時になってしまいました。しかも、次の日は5時半起床というハードスケジュール! もうやばいって・・・

とにかく、この日は本当に幸せでした。賞をもらえたことも含めて、あらゆる意味で幸せでした。「ISS最高!」の一言です。テキストにサインしてくれた人、ありがとう!

P.S.
ちなみに、次の日、Andyが「あいつはよく分かっている、いいヤツだ。」と話していたと、Shuが僕に話してくれました。(Shuは日本からの生徒の一人だが、中国籍の人で中国語もペラペラ) 一人の日本人として気持ちががきちんと伝わったことはとても嬉しかったです。こんな感じで日中関係も良くなっていくといいんですが・・・ この場で生まれたひとかけらの希望が、少しずつでも育っていってほしいと思います。


最終日 - 日本へ

とうとうこの日がやってきてしまいました。いよいよシドニーを去らなければなりません。

まだ夜も明けきらぬ早朝・5時半に起床しました。が、なんと3時間しか寝ていない! 思ったより眠くないのは幸いしました。ぱっぱと手早く朝の支度をし、荷物を引っ張って玄関へ向かいました。そこには、予想以上の人が。友達になった人たちが、朝早く起きて、見送りに出てきてくれていたのです。みんなと抱き合って別れを惜しみました。

本当に楽しかった。みんなありがとう! 絶対また会おうな!

そして、車が動き出しました。サヨナラの時間です。

9時過ぎには飛行機もシドニーの地を離れ、一路東京・成田へ向かって飛び立ちました。天気は快晴、真っ青な空でした。日本に戻ると白っぽい空とガスで濁った街が待っているいると思うと、下に見える美しい町並みがこいしいばかりでした。

そして、9時間ほどのフライトの後、飛行機は無事成田空港に着陸しました。着陸直前で印象的だったことは、森の色が「深緑」であったこと。シドニーは黄緑。やっぱり湿度が高いせいでしょうか・・・ 飛行機から降りて、空港内への通路を抜けるときには、全身に湿気がまとわりつくのを感じました。日本の夏、です。うはっ、じっとりきてるよ・・・w

日本人生徒は、ほとんどの人が空港周辺で泊まって次の日に帰宅する予定にしていたようですが、僕はちょっと無理して今日中に帰ることにしていました。着陸後1時間で乗り継ぎの成田エクスプレス⇒新幹線の最終便という、結構危険度の高い乗り継ぎでした。

実際には、解散後も時間がかなり余ったので、しばらくみんなと雑談をして時間をつぶしていました。泊まる人はゲートの出口あたりでまだたむろしていましたが、僕は列車が20分前になったのでホームへ向かうことにしました。みんなに「絶対同窓会やろな!バイバイ!」と言い、みんなを何度も振り返りながら、ホームへ降りるエスカレーターに乗りました。(2007/05/12-13、各代合同で同窓会を開催した)

成田エクスプレスも新幹線も無事乗ることができ、あとは京都で降りれば親が迎えに来てくれます。そして、ついに京都に到着しました。

家に着いたのは結局1時ごろでしたが、親にいろいろな思い出を話していると、結局かなり遅い時間になってしまいました。おみやげの整理とか、荷物の整理とか。こういうことは癖でついついやってしまいます。翌日は当然、爆睡(笑) やっぱり自分のベッドの寝心地は最高ですw

ともあれ、何の事故も無く、たくさんの思い出と学びを得て、同時に大きな成果も挙げて、日本に帰ってくることが出来ました。本当に楽しかったです。一生の思い出です。

みんなありがとう!!!


こんな素晴らしい2週間でした。

2年たった今でも、ISSを思い起こせば、いろいろな記憶がよみがえってきます。

そして、そこで得られたものは、ただの知識だけでもなく、ましてや賞などでもありません。ISSが大事である理由は、ちょっとクサい言葉ですが、ひとつの大きな「青春の思い出」だからです。もうひとつは、そこで出会った仲間、特に日本人の同志、とのつながりです。ネット上や同窓会や会って感じることは、こんなすごい人たちとISSを通してつながり合えたことの喜びです。

先輩はすごい人たちばかり。同輩もみんなすごいです。そんな中で自分、はっきり言ってくすんでますw これから負けないように進歩しないと!と思います。しかし、もちろんそれは競争ではありません。努力をつなぎ合わせて、またお互いに知識や体験を交換できれば、それこそが最高の幸せです。


そして、今年7月、自分たちの代にとって初めての後輩たちがISS07に旅立ちます。

彼らが素晴らしい体験をして、数年後の合同同窓会で素晴らしい話を聞かせてくれることを楽しみにしています。

新・日本代表に栄光あれ!

Fin.