白峰三山縦走 2/22・5日目(北岳山荘〜間ノ岳〜農鳥小屋〜農鳥岳〜大門沢小屋)

この日のうちに大門沢小屋までたどり着きたかったため、この日はまだ真っ暗なうちから歩き出した。相変わらずの快晴で満天の星空だったが、昨夜から冬山らしい強い風が吹き始めた中、今シーズン初めての目出し帽・ゴーグル着用でのスタートとなった。(強風とはいえ、冬山では並以下の風だろうと思う。たぶん10m程度。実際、一度も耐風姿勢をとることはなかった。)

・・・

半径数キロには誰もいない。トレースもない。今ここにいるのは自分だけ。今ここで頼れるのは自分だけ。見上げれば星々と月があって、アイゼンをキシキシと鳴らしながら一歩ずつ歩を進めていく。そのリアリティあふれる鮮烈な感覚は、そのときだけにしか感じることができないもの。

パソコンの前に座って写真を眺め、文章を書きながら、その感覚をどの程度思い出せるかといえば、おそらく3%がいいところだ。その場にいた当事者でさえその程度だ。ならば写真と文章で伝えられる迫力とは果たしてどれほどのものだろうか。



そしていよいよ夜が明ける。


星がとても 近くあって


夜明け前の北岳。神々しいを通り越して畏怖を感じる。


あぁ・・・


おぉ・・・・・・


朝陽が雪を染めていきます


ザ・冬山な光景


モルゲンロートに染まる端正な北岳


顔面フル装備の様子w


仙丈ヶ岳、その後ろに北アルプス全山






雪の少ない斜面を下って農鳥小屋へ。そこから農鳥岳へと登り返す。


雪壁をよじ登る箇所あり。


傾斜は60度ぐらい? 登りはもちろんのこと、下りだとなお慎重になる必要がありそう。(ピッケルで安全を確保した上で撮影しています)


塩見岳がどーんと腰を据えています


最後の主要ピーク、農鳥岳登頂!


大門沢下降点


雪の斜面を気持よく下ります

で、ここからが今山行最悪のラッセル地獄。一週間前の雨とその後の日差しでしっかりと重くなった深い雪が続く上に、その下の潅木の背が高いらしく、踏み抜いて胸まで埋まってしまうことが数十回。気温が高かったのでその雪がしっかり緩んでいて重いこと・・・w

また、下部では全層ザラメになり、一旦沈み込むと足を引き抜くのが非常に困難になる。一度だけ、数分間にわたって抜ける気配がなく、ザックを外すこともできず、次第に上半身だけがずり落ちていってねんざをしそうになり、冷や汗を流す一幕もあった。

沢沿いに行けばシリセードができたりしてもっと楽だっただろうとは思うが、尾根筋を下りきって大門沢沿いに降り立ったところで沢筋を振り返って眺めてみると、あるわあるわデブリの山w 枝沢でもそこかしこに中規模な雪崩のデブリがあった。どれも飲まれていれば死亡級の大きなもの。リスク回避のためにラッセル地獄は承知で尾根筋にルートを取ったが、やはり正解だったようだ。


といはいえ、樹林帯でも場所を選べばシリセードが出来るところもある。


枝沢のデブリ。明らかに一週間前の大雨で誘発されたものだ。飲まれていれば命はない。

まるで雪が洪水のように流れて侵食したかのようにデブリの部分だけが低くなっている。おそらく雪崩れる前は右側の土手状の場所と同じ高さまで雪があったのだろう。緩斜面の湿雪雪崩であることから、発生時のスピーはかなりゆっくりだったのだと考えられる。

また、雪崩が通過してデブリが残らなかった雪の河底?は締まり雪になっていて靴の裏で滑って下ることができてとても快適だ。また、デブリ上はよく圧縮されて締まっていて歩きやすい。この時は不安定要素が少なく安全と判断したが、念のためいつもより早めのスピードで通過するようにした。

写真のようなデブリはまさにそこかしこにあり、雪崩発生時に遭遇していたら・・・と冷や汗を流しつつも、よく固まったデブリとフラットな川底はとても歩きやすく、ありがたく利用させてもらいながら下っていった。デブリ伝いに行けなくなったところで、夏道を目がけて直登復帰し、再びザラメ雪のラッセルに悩まされ、時折ルートロストをしつつ、大門沢小屋にたどり着いた。