終わり、そして始まり。

(9/24 大幅改訂)


夏が終わった。涼しい秋がやってきた。

そして、同時に、僕の短い夏も終わった。


・・・・・・


いろいろあって、僕はまた山へと戻っていくことになった。


もし、あの人と再び仲むつまじい関係に戻れることがあったとしても、自分はもう山から離れることはしない。それは、自分の自立を失わせ、最後には大切な人との関係を崩すから。

一ヶ月前の自分は、これまでのどの時期よりも幸せだった。心の底から幸せだった。戻れることなら、今からでも戻りたい。また同じ時間を過ごせるようになりたい。

だけど、それが叶おうと叶うまいと、自分が自分のために使う時間は持たなくてはいけない。それをあの人から教えられた。そして、今再びそんな時間を「持ちたい」と思えるようになった。


それが、自分にとっては、山なんだ。

3ヶ月前までいつも思い描いていた、刺激にあふれる冬山への挑戦なんだ。


この2ヶ月、僕はなにひとつ山を楽しめなかった。山小屋バイトも、後立山日本海縦走も、ちっとも楽しくなかった。今までに経験したことのないような幸せを前に、僕の感覚は麻痺してしまっていた。

あの人のためにも、山はやめよう。それが間違いだった。自分も山を嫌いになって不幸になったし、相手にも重荷を与えてしまった。趣味に全力投球していたエネルギーを、愛する人に全て向けてはいけなかった。

皮肉かもしれないが、その幸せがぐらついたことで、自分の心に山を楽しいと感じられる気持ちが戻ってきた。再び純粋な自分を取り戻せるような気がする。

そして、山を楽しめる本来の自分でいられれば、きっとあの人ともバランスよくやっていけると思う。


冬は嫌いだけど、冬が待ち遠しい。

厳しい自然の与えてくれる鮮烈な感覚が、僕を惹きつけてやまない。真っ白な雪の上にトレースをつけて自分の力で歩いていく、リアリティあふれる感覚が、懐かしくてたまらない。


自分は、元の自分に戻った。