北八ヶ岳探訪 プロローグ

膝痛に悩まされ、ついに迎えた夏だった。

右膝が痛むことは前から時折あったものの、今回ほど長引いたものはなかった。5月中旬に発症したきり全く良くならず、6月中旬にはMRI検査で疲労骨折で全治3ヶ月との診断を受けた。一時は階段を下りたりイスから立ち上がる程度でさえ痛むという状態だった。今年の夏は山には行けないだろう、と覚悟した。

しかし、その後、安静にしたおかげで着実な回復を見せ、7月中旬にはドクターストップ解除となった。そして、7月末に試験が終わる頃には十分山を歩けるほどに回復していた。

試験終了とともに、鏡山と伊吹山の日帰りで実地チェックをした。多少の違和感はあったが、目立った痛みは出ることはなく、十分歩くことができた。標高差1150mの伊吹山を下ってこれたことで大きな自信と喜びを得た。


夏の山行の第一弾は、当初は中央アルプス縦走の予定だったが、それを北八ヶ岳に変更した。地形がなだらかでエスケープルートが豊富であるという理由からだった。(実際には、「地形がなだらか」=「登山道がなだらか」ではないということを思い知ったわけだが・・・)


まだ全開で歩ける状態ではないとはいえ、全く山に行けないことを覚悟した身からすれば、再び山に戻れるというのは、夢のような話だった。


こうして、僕は山に帰ってきた。