『日本国憲法の逆襲』

という本を読んでいます。たまたま図書室の書架に入っていたので試しに読んでみたら、かなりの当たり本でした。

論文調で書かれたいわゆる「眠い本」ではなく、著者とゲスト(?)との対談が10人ほど入っている、なかなか読み応えのある本です。どちらかというと護憲寄りに偏っていると思いますが、出てくる人それぞれが違うアプローチで護憲という結論を出しているのは面白いです。

長野県知事田中康夫氏や社民党国会議員の辻元清美氏といった現役の政治家から、在日朝鮮人やかつて左翼活動に携わった方なども出ています。みんな個性や経験が豊かで語り方もひとりひとり違いますし、対談の内容もユニークな実体験を通しての話なので、読んでいて飽きることがなく、とても面白いです。

中でも特に良かったのは、むのたけじ氏(ジャーナリスト)の「ぞうきんのように使わなきゃ」の対談です。

彼は、対談の中で、日本人は憲法を大事にしすぎてその価値を忘れているといいます。9条問題ややかつての治安維持法の話などを出しつつも、冒頭と締めくくりは憲法の本来のあり方を、「絹ハンカチ」と「ぞうきん」という言葉を交えながら分かりやすく語っておられます。

現在の日本国憲法に対しても、実生活から離れた大変立派なものであって、たとえていえば礼服を着るときの胸ポケットの絹のハンカチのようにきれいに扱うような意識が、今の若い方々にもあるのではないか。私は、憲法は絹ハンカチではない、台所を朝昼夜清める雑巾のように使えということを言いたいです。日用品です。 *1

絶えず社会生活を清める役をしてこそ憲法ですな。その努力が私たち日本人はこれまであまりに不十分だった。今日からの大事な努力目標ですね。(ここで対談は終わる) *2

これを読んで、「あぁ、そういうことだったのか」というものを感じました。

憲法をぞうきんのように慣れ親しんだ日用品としてそばにおいておくことで、いつでもそれを取り出して社会に潜む汚いものに対抗できる、ということなんですね。

たしかに、憲法について自分なりに考えたり他人と議論したりしたことはありましたが、護憲改憲の議論も、なんだか遠くで起こっていることのような感じがしていましたし、憲法が私たちの実生活に役立っているという実感もそれほどありませんでした。9条がどうのと自分で言っている割に、実は何も分かっていなかったようです。

しかし、むのさんの視点は、憲法がまさに私たちとともに生きているということを実感させてくれたとともに、憲法と現実がかけ離れていることも思い知らせてくれました。

しかし、「生きているけど現実と離れている」というのは、矛盾をはらんだ不安定な状態です。ですから、このまま「遠くのもの」として放っておいては、現実からさらに遠ざかってしまうでしょう。だからこそ、生きたもの、日用品、ぞうきん、といった身近なものとして、憲法を私たちが身に着けなくてはならないでしょう。

未成年の未熟な自分から見ても、明らかに今の社会には違憲行為があふれています。ひとりひとりが自覚し、みんなが「憲法のぞうきん」を持つようになれば、悪い政治家や役人たちも簡単に手は出せなくなるでしょう。

憲法は私たちの強い味方です。手放せない生活必需品であるべきです。それをただの飾りにしていては絶対にもったいない!

もう一回考えてみませんか?

日本国憲法の逆襲

日本国憲法の逆襲

*1:日本国憲法の逆襲 p54-55より

*2:同 p70より